普通の事業でいう、売上。社会保険取り扱いのクリニックの場合、社会保険診療報酬と自由診療報酬(予防接種や歯科クリニック様の場合には自費診療もあると思われます。)社会保険診療報酬には患者さんから直接受取る窓口収入の他に社会保険報酬支払基金と国民健康保険団体連合会から振込まれるものがあります。自費収入は通常窓口で受取る金額だけですので単純にその合計額が自費収入合計になりますが、社会保険診療報酬は2か月遅れで振込まれますので例えば4月開業(診療開始)すれば入金は社会保険報酬支払基金、国民健康保険団体連合会共に2か月遅れの6月になります。ここで一番チェックしておきたい点が社会保険報酬支払基金からの入金は源泉所得税が控除されているという点です。
例えば、4月中に社会保険の診療が70000点(1点10円の計算となります)あった場合、窓口で患者さんから(全員3割負担と仮定して計算すると)21万円ご支払い頂き、残り(70万円-21万円=49万円)が社会保険報酬支払基金から振込まれるのですが、社会保険報酬支払基金からだけ(国民健康保険団体連合会にはこの控除がありません。)29609円源泉所得税が控除されて(49万円-29609円=)460391円が振込まれてきます。通帳に振込まれた金額だけを、売上と認識すると控除されている源泉所得税分の売上金額が少なく計上されてしまいます。社会保険報酬支払基金からの振込通知には控除した源泉所得税額の金額が記載されていますので、忘れずその分の金額も売上に計上しておいて下さい。控除された源泉所得税額は、確定申告時に支払い済の税金として算出した所得税額から控除して精算します。
ちなみに、医療法人に対する振込は社会保険報酬支払基金からの源泉所得税額の控除はなく、請求額の満額が振込まれます。
青色決算書をみると、売上の次の項目が売上原価となっています。これは、売上を上げる為に直接要した費用。小売店でいう商品の仕入れに当たります。薬局様ならその通りの商品の仕入。医科クリニック様の場合ですと、医薬品の仕入や検査代、歯科クリニック様だとそれに外注技工料という項目が考えられます。
売上から売上原価を引いたものが 売上総利益一般に粗利という事になります。この金額で固定費(売上原価は単純に患者さんが一人もいらっしゃらなければ発生しないものですが、売上総利益から下の経費という部分は患者さんがいらっしゃろうが、一人もいらっしゃらなかろうが発生してしまいます。)をカバーするというのが第一目標となります。
青色決算書の経費という欄をご覧下さい。租税公課(ちなみにこの科目は、経費になる税金を払った場合に使います。)からはじまって様々な科目の名前が並んでいます。青色決算書は医療に限らず一般企業も使いますので、荷造運賃、貸倒金(通常保険診療のみが、つけでの売上となる医療機関ではめったに発生しません。)や外注工賃(外注検査代は売上原価です。)等医療機関では使わない科目はそのまま空欄にしておいて下さい。8~32までの経費欄にはクリニックを経営する為に必要だった費用を記入します。どの科目にするか?については、先生が来年も再来年もこの項目が増加したな。減少したな。と把握できる科目であれば問題ないと思います。(とは言っても、普通電気ガス水道代は、水道光熱費を使いますし、クリニックの家賃は地代家賃のところに記載します。)医療関連の事業所様で特別に科目を空欄に入れておいた方が便利そうなのは諸会費(医師会費、歯科医師会費、薬剤師会費等が結構多額に出る事が多いようです。)リース料(診療機器やレセプトコンピューター等高額機器の導入も考えられます。)等でしょうか?滅多に発生しない、少額な経費はわざわざその度に科目を作るとかえって煩雑になって経営状況の把握の邪魔になりますので雑費で処理して下さい。
売上総利益から経費(支払利息もここに入っていますので)を引いた差引金額33番が先生の当期の経常(普通の経営の)利益です。
ここまでで、マイナスが出ていなければ売上総利益で固定費をカバーできているという事になります。
ちなみに、ここの金額が丁度0円になれば損益分岐点。売上総利益で固定費をカバーでききるポイントの売上高だった。という事です。
国税庁 青色申告書